Aug.19 2018 | category:漢方薬膳
先天の精と人の一生
先天の精と人の一生
両親から受け継いできた持って生まれた生命力そのものである『先天の精』、そして生まれてから後、摂取した飲食物から脾(消化器系)の働きに
よって作られる『後天の精』が腎に蓄えられて、成長や発育、生殖の土台となると
東洋医学では考えます。
この『腎』というのはいわゆる西洋医学的な『腎臓』の働きだけでなく
ホルモン分泌(生殖系)や中枢神経、内分泌、泌尿器など、様々な
生命の営みの中心となる働きをしているとされています。
先天の精は、後天の精でエネルギーを補充されて力を発揮して
いきます。また、後天の精を作り出すには先天の精が必要であり、互いに
依存しながらその人の生命力となっていきます。
両親からの受け継いできた先天の精が活発に動くには
食べ物の力(後天の精)次第というわけですね。
そのようにして先天の精・後天の精は腎に蓄えられ、
腎精もしくは精気と呼ばれます。
女子は7歳ごとに、男子は8歳ごとに腎の盛衰があります。
腎の力が弱いことを『腎虚(じんきょ)』と言い、
その力を補い、活発にすることを『補腎(ホジン)』
生命力そのものを活発にすることとなります。
腎の働きは様々ですが、生殖・成長・発達・老化と
受精卵から始まり、命を閉じるその時まで腎に蓄えられた
『腎精・精気』をよりどころに生きていく事になります。
今回は腎と脳に関することを書いて行こうと思います。
現存する中国の最古の医学書物である『黄帝内経』の『霊枢・経脈篇』には、
「人始めて生ずるや、先ず精をなし、精なりて脳髄生ず。」と書かれています。
男女の陰精の出会いで新たな命(精)が生まれ、その精から脳髄が生じる、
と考えられています。
男性と女性の精が交わるところから人の一生は始まり、その精は脳髄に
繋がっていく、という事になります。
また『髄海不足、則脳転耳鳴、脛酸眩冒、目無所見、懈怠安臥』
髄海である脳への精が不足すると、クラクラしたり、耳鳴したり、足腰がだるく
眼が見えにくくなって、やる気不足で横になってばかりいる、という
老化・認知症のことまでキッチリ書かれています。
先日の女性ホルモンとハーブ・漢方で書いたように西洋医学的には
視床下部や脳下垂体からは生殖に関するホルモンや甲状腺、プロラクチン、
副腎皮質刺激ホルモンなど生命に関するホルモンが分泌されています。
そういった観点からも腎と脳(髄)の関連は深いと言えます。
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このホルモン分泌は後日、また違う記事でも取り上げますが
とても大切な部分です。
そして、肝心なのは
『先天の精』は『後天の精』によって栄養を供給され
『精』となる、ということです。
持って生まれた資質は、食べたものに影響され、
それは脳・ホルモンにも影響するという風に解釈することができますね。
生殖ホルモンを活発にしたり、老化の予防になる
食べ物はどんなものが良いのか?
腎を補う食材は『補腎食材』と呼ぶことができます。
黒い色の食材・山芋・木の実・鹿肉・うなぎ・カツオなど・・・。
体にとって負担なく吸収しやすいものは山芋、になるかと思います。
鹿肉はとても体が温まりますが、逆に体が熱っぽくなるため
夏は避けたほうがよろしいかと思われます。
ジビエも時期を考えて食べることが美味しさにも
体への良い影響にもつながりますね。
木の実の栗・くるみも油が多いので食べすぎると胃もたれ
したりします。
薬膳というのは、良い面だけでなく、その反面も必ずある、ということも
意識して取り入れていただければと思います。
東洋医学の五臓・五行や気血精、陰陽の概念は
古い歴史の中で絶えず、いまに伝えられています。
今の時代に学んでも新しい視点と発見を
もたらしてくれる学問である、と学ぶほどに感じます。
どうぞ、ご興味あれば講座などにご参加ください。
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